宅建業法改正後4年でも低普及率のインスペクション
インスペクション(既存住宅状況調査)に対する意外な反応
先日ある町の不動産会社の社長から、自社の建物のインスペクション(既存住宅状況調査)をして欲しいという依頼で、社員と共にお伺いをした。インスペクションは問題なく終了したが、その後で意外な話をお聞きした。
斡旋や販売をする物件は、一度も建物のインスペクションをしたことがなく、お客様、オーナー様にもその話をしたことがないとのこと。インスペクションの内容が難しく、話ができないそうである。インスペクションは、何かあればまた依頼するが、たぶん今はないと思うという話であった。
インスペクションをするとオーナー様が不安になる???
その後日、ある不動産会社フランチャイズ本部より研修の打ち合わせのために初めて伺った。町の不動産店もこのままでは生き残りが難しく、そろそろリフォームをしないといけないので研修をしたいとのことであった。その時、インスペクションからリフォームに繋げる話を入れてはどうかと提案したが、また意外なことを聞いた。
そこの所属の不動産業者さんは、インスペクションをすることで家に何か悪い所が出るとオーナー様、売り主様が不安になるのでインスペクションはしたがらないとのこと。この話にも非常に驚いた。
2018年の宅建業法改正後もインスペクションが普及していない
すべての不動産業者さんがそうではなく、2018年4月の宅建業法改正による「インスペクション制度の説明義務化」により、その法規にきちんと対応されている会社も多いと思う。弊社がお会いした会社は、特殊なのだと思いたい。
インスペクションの普及率はまだまだ多いと言えないのが現実である。一般社団法人 不動産流通経営協会(2021年10月発表)の「不動産流通業に関する消費者動向調査 <第26回(2021 年度)> 調査結果報告書(概要版)」によると、
民間の建物検査(不動産会社等による住宅保証もしくは「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」を利用する際に実施された検査以外)の実施率は、23.0%である。内訳は
・「既に売主がおこなっていた」17.3%、
・「売主に依頼しておこなってもらった」5.7%
※参照:一般社団法人 不動産流通経営協会(2021年10月発表)の「不動産流通業に関する消費者動向調査 <第26回(2021 年度)> 調査結果報告書(概要版)」
実際に中古住宅を購入するお客様の側にたてば、インスペクションは必要不可欠であるが、まだまだインスペクションに対するメリットなどの理解度や認知度が少ないことや、買主が利用しやすい環境整備などの問題が浮上している。
住宅リフォーム業界と 不動産業界の意識のずれはあるのか?
住宅リフォーム業界にとっては、家の点検・インスペクションはお客様のためにも自社の生涯顧客確保のためにも重要だということは常識になっている。
業界側にたてばリフォームは、点検・インスペクションの仕組みをつくることで受注できる体制ができる。
今後中古住宅流通やリフォームによる既存住宅の耐久性・快適性の確保の仕事がさらに増えてくる。
不動産業界にもこの意識づけが、もっともっと浸透し、お客様が安心して快適に住める中古住宅が増えることを願うばかりである。